峠の 手前 霧が 切れて 古い 祠が 現れました。 誰かが 置いた 松ぼっくりと 錆びた 鐘が 寄り添い 道を 行き交う 願いを 静かに 集めていました。 私たちは そこに 水を 分け合い 次の 急登へ 向けて 心の 余白を 取り戻しました。
夕方の 小屋で テーブルに 広げた 地形図へ 先客が 黒鉛で 走り書きした 近道の 筆致が 残っていました. 彼の 失敗談と 笑い声を 追体験し 正規ルートを 選ぶ 判断が すっと 腑に 落ちました。 未知の 走り書きが 仲間意識を 生む 夜でした。
稜線で 雷鳴が 去り 斜面に 虹が 立ちました。 互いの 顔は 濡れ 目尻が 緩み 言葉より 先に 握手が 生まれました。 危うさを 越えた あとに 宿る 静かな 充足は 写真より 長く 残り 次の 山行の 動機を そっと 温めます。